「プリズムの夏」関口尚

「プリズムの夏」関口尚

2002年の小説すばる新人賞受賞作。
第一印象は石田衣良っていうところ。
ちょっと途中で、主人公が自分の気持ちに浸りすぎて
長々と言いすぎと感じたけど、今風な設定であるし、さらっと読めた。

ただここでもインターネットの掲示板=自分の陰を出すところという設定。
こういうのが小説には多い。リスカ、自殺といった話題も。

インターネットでは、もちろんそれぞれの人は誰かに読まれることを知りつつも、自分のプライベートなノートのような感覚で、自分の気持ちを書く。
昔だったらどっかに隠していたノートに書いたようなことを。
確かに誰が書いたかはわからないけど、そういう気持ちを持った人がいるっていうことはわかるし、インターネットでは、奥にしまっとおいたものも検索で簡単に見つかってしまう。負の気持ちだってそこではたくさんまとめられて「はいこれだけあったよ」と見せられる。

誰にだって気持ちの沈む時があるけど、そればかりじゃない。
ただ、そういう時は何かにすがりたいから、例えばインターネットにそれを求める、なんていうパターンが多いと思う。
順調にいってるときは自分でやっていけるから。

ある点だけで気持ちの書かれたものを切り取って、それしかないように見せられてしまう。そして自分と同じものが山のようにあると錯覚させてしまう。それが常態のように。
苦しい時には何かにつかまろうとしてるだけに、そういうのはとっても怖い。

こうあってほしいというのは..
ネットでつながるのでも、同じという接点だけでつながるんじゃなく、幅でつながってほしい。そうすると同じ所もあるけど、違いもあることがわかるし、いいときと悪いときのサイクルが違う。そういう違いがからみあって、一方が悪いときは他方が何とかそれを助けてと、そんなつながりになってほしいと思う。 理想的すぎるかな。

あらすじは全然書いてないので何だかわからないだろうけど..
最後に、悩んでた女性は自分が昔、無心で打ち込めたもの=琴 までもう一度立ち戻って、やり直しはじめました。

悩んでるとき、その悩みについて考えてもなかなか答えの出ないことが多い気がする。なぜなら自分が不得意であるか悩むから。
好きだったこと、得意だったこと、そういう自分が生きるところまで戻ってやってみるってことなのかな、と思った。

プリズムの夏

プリズムの夏